失恋は淡い波の泡のよう
手にする途端に消えていく
思い出の先にある藍い視界が
無理やり自分を際立させ
心を撫でる荒い風が
想いを揺さぶりさらってく
ほろ苦い海の水も潤せず
見つめるだけの時の間は
大切な自分だけの
誰もいない心の海
打ち寄せては
消えていく
当時、音楽仲間の友人がパブで働いていた。
パブといっても、カウンター席と二つぐらいのテーブル席がある小さな店で、タバコの煙と薄暗い照明の中、洋楽が流れている音楽好きの若者が集まってくるようなパブだった。
ある日その友人から「可愛い子が一人で来ているから来いよ!」と電話があった。
「店まで2時間か」。
気が進まなかったが、たまには息抜きで酒でも飲むかという勢いで向かった。
カウンター席の片隅に座って、友人と話をしていた彼女を見るなり一目ぼれしてしまった。
長い髪と大きなキラキラした目に釘付けになってしまったのだ。
もう、友人の事も飲む事も忘れ、普段は消極的な私は自分でもびっくりするぐらいすぐ彼女の隣に座った。
緊張して何を話したか全く思い出せないが、映画を観る約束をする事だけは出来た。
天にも昇るとはこういう事かと思いながらその日は全く眠れなかった。
当時は携帯など無かったから、翌日ドキドキしながら近くの電話BOXから彼女の自宅に電話をし、約束通り来てくれた。
デートは彼女の希望で映画館ではなく、当時ディスコと呼ばれていた場所に変更。
ダンスホールの様な広い場所で、チークタイムの曲が流れるとすかさず手を取り慣れないダンスを踊りながら、引っ越しをしてきて寂しかったからフラっと寄ったのがパブだった事や、仕事の事など彼女の話は尽きなかったが、その顔を見ているだけで本当に幸せだった。
その日を境に付き合いが始まり、数カ月後同棲生活が始まった。
挨拶に行った時、彼女の両親はかなり怒っていたが、なかば強引なやり方で両親の気持ちを考えるとひどい男だったに違いない。
彼女は仕事、私はアルバイトをしながら音楽をやり毎日が夢の様に過ぎていった。
よく二人で屋台に飲みに行き、知らない人と仲良くなっておごってもらったり、自転車での帰り道、二人乗りをしながら酔っぱらってこけたりと、何をするのも楽しくて仕方がなかった。
銭湯で壁を挟んで声をかけあったり、外で出てくるのを待っていたりと、まるでかぐや姫の曲「神田川」とそっくりだった。
そして月日が流れ、気が付くと6年目になっていた夜、アルバイト先の電話が鳴り彼女から半分泣きながらの別れの話だった。
その日会う約束をするのが精いっぱいで、仕事も手が付かなかった。
彼女は「いつまでもこんな状態だと結婚できない」という事と「帰ったらカセットのボタンを押して」と。
自宅のアパートに戻りすぐカセットを聞くと流れてきた曲は、彼女が好きだったユーミンの青春のリグレット。
「♪ 憎んでも覚えてて……」何度も何度泣きながら聞いていた。
ケンカしたり、将来像を描けなくて泣かせてしまったりと、後悔ばかりの私の長い長い夏が終わった日だった。
今でもその曲を聞くと思い出す。
でも、あの時の様に死にたいくらいの気持ちではなく、彼女が幸せな人生を送っていると信じながら。
失恋は確かに辛かったし、癒えるのにかなりの時間がかかったが、沢山の贈り物を彼女からもらった気がする。
決して彼女を憎む気も恨む気持ちも起きなかった。
確かに素晴らしい時間を過ごし、思いっきり優しい人間でいれたからだ。
そして思いっきり寂しくしてくれた。
今ではモノクロームの様な想い出になってしまったが、大切な1ページに変わりない。
『夏のポラロイド』オリジナル曲
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