心の道標

様々な自分の疑問に、自分で答えを見つける旅

外国人と暮らす事⦅現実⦆(2)

日本には今、多くの外国籍の人達が住んでいます。

勿論、何らかのビザ(査証)を持って来日し暮らしています。

私のフィリピン人の妻は、結婚ビザ(正式名称を在留資格「日本人の配偶者等」)を所得し、来日しました。

結婚ビザだからと言って、ずっと住めるわけではありません。

在留期間更新許可申請をして、ビザの延長手続きをしないと本国に帰るか、不法滞在として入管施設に送られる事になります。

延長には様々な条件があり、申請にはこれまた様々な書類を提出しなくてはなりません。

延長が認められても期限付きのビザで、1年~3年という有期です。

結婚ビザの場合、当然配偶者と生活を共にしている事が必要条件です。

結婚し、彼女が来日して数か月後、入管職員が確認の為に訪問してきました。

偽装結婚不法滞在者を見つける為ですが、当然気持ちのいいものではありません。

始めから疑いの目で入管は来ている訳ですから。

 

市町村が発行する在留カードは、身分証明書と同じもので、必ず携帯しなくてはいけません。

妻も数回ですが、警察官から提示を求められたことがありました。

このカードにビザの期限が記されていて、更新期限をうっかり忘れ切れていたり、不携帯の場合は警察署に連れて行かれます。

勿論悪い事をしていない限り逮捕とはなりませんが、ビザ申請の際の身元保証人が居なければ、もしくは連絡が取れなければ、面倒な手続きと多くの時間を取られる羽目になります。

妻は1年間と3年間の2度延長した後、永住ビザ所得の為の手続きをしました。

永住ビザ所得は場合にもよりますが、税金を納付している事、年収が基準を満たしているかや簡単な日本語が解るか等ハードルが高く、子供の有無も大きく影響します。

その他、多くの書類をそろえる必要があり、その中でも日本に居たい理由の書類が重視される為、15~20万円で行政書士事務所に頼む人も多くいます。

ただ、私の妻の様に結婚ビザで入国している場合は条件が緩和されます。

ただ離婚するカップルも多く、手助け無しにはビザ申請や延長手続きはかなりの難関です。

更に子供がいるいないで大きな差が生まれます。

妻の場合、申請後6カ月間審査の結果待ちでした。

来日して5年後、所得する事が出来、当時周りは「すごく早くとれたね」とビックリしていたほどです。

永住ビザ所得後は、外国籍のまま延長申請をする必要もなく、仕事も制限なしに就く事も出来、カードを作れたりローンを組んだりと、様々な恩恵を受けられる事になり、有る無しで日本での暮らしやすさが全然違うのです。

 

もしフィリピンやタイ、ベトナム等で生まれたとしたら、外貨を得る為出稼ぎに行くか、私達の様に国際結婚以外、もしくはかなり裕福であるか、専門教育を受け、スキルを持っていない限り外国に行く事はほぼ無理でしょう。

来日している外国人観光客は、その多くが不法滞在の心配がない経済的に豊かな先進国の人達で、アジア人に関しては裕福な人達ばかりです。

憧れの日本行きを夢見ている貧困国のその多くが夢として終わるのです。

以前にも書きましたが、妻の親や兄弟を呼ぶだけでも多くの書類と時間がかかります。

入管に出向くといつも感じるのは、頭から不法滞在しないか?不正があるのではないか?という疑念から人を見ているようです。

また、あくまでも個人的な見解ですが待たされている間も、明らかに欧米人、特に白人に対する態度とは違うのです。

妻の母の日本滞在の親族ビザ延長申請の際の対応も、まるで権力を振りかざし、言う事を聞かせるという態度でした。

「今度だけは認めるが、今後は延長は認めない(実際の発言)」と言った入管職員の言葉が忘れられません。

この人には家族はいないのかと思ったほどです。

しかも何度その訳を聞いても根拠や理由は一切教えてくれないのです。

理不尽な事です。

実の母親、家族でもこんな扱いを受けるのです。

全ての役人がとは言いませんが、私の知る限りそのような人ばかりでした。

 

不法滞在や偽装結婚は違法で、あってはならない事ですが、人権を軽視するような扱いや見下すような見方は本当にやめてもらいたいし、それこそ法で謳われている平等の理念を初心に立ち返って忘れないでもらいたいのです。

そして不当な利益に群がり、加担する日本人や組織を徹底的に取り締まる方が先にやる事なのです。

以前にも書きましたが、悪質なブローカーや莫大な借金を背負って来日する外国人に対し、「雇ってやっている」「来させてやっている」という意識が無くならない限り、彼ら外国人が犯罪に巻き込まれたり、また犯してしまったりする原因の一端になるのです。

ニュースは外国人が罪を犯した事だけを取り扱い、その背景に何があるのかまでは報道しません。

 

外国人と暮らす事は、何も身近な配偶者だけでは当然ありません。

私が住んでいる廻りには、色々な国の人を見かけます。

アジア圏の方が特に多いのですが、ロシアやクルドといった白人系の方もよく見かけます。

一体どんなビザで住んでいるのか全ては解りませんが、知り合いの外国人は少なくとも必死で働き、本国の家族の為にお金を送っている人が多いのです。

中には難民申請等で仮放免で入管から出て暮らしている人も多いのですが、彼らは保険も無ければ居住地域外に出かける事も出来ません。

まして子供がいる人は学校にも行けず、病気等、民間の支援が無ければ途方に暮れてしまいます。

そして今回の入管法の改正により難民申請に制限がかけられ、強制送還になっていまいます。

母国に返されると命を落とす人も出てくるでしょう。

何より日本で育った子供達は親と離れ離れになる可能性も大きいのです。

クルド人の苦悩の一例としてですが、

『高校2年の女子は「ずっと日本で暮らし、大学進学したいと勉強している。突然、法律入管難民法改正)が変わり帰れといわれても言葉も分からないし納得できない」と訴えた。小学校5年の女子も「何も知らないトルコに行きたくない」と話した。

 中学校1年の男子は「病気になっても保険証がない。(全額自己負担で)高額なので病院に行かずがまんしている」。保護者として参加した男性(43)は長女の治療費に5年間で800万円かかったといい「返済に苦労している」と語った。』

東京新聞2023年4月24日の記事より引用

また、

『ペルー出身の両親の来日後に生まれた大学4年の女性(21)は「入管の担当者に『家族全員で帰国したら』と言われ続けた。私は母国語はほとんど話せないのに」と明かした。「日本に適応できるように」と日本語で教育してくれた父は2016年に強制送還され、母と弟の3人で暮らす。

非正規滞在の子どもと家族の在留資格を求めて記者会見をする。(中略) 女性は在留資格がないため、就職活動もままならない。「私のような子どもは全国に300人はいる。不安を抱えたまま大人になってほしくない」と強調した。

 両親らが12年に強制送還された当時、高校2年と中学3年のフィリピン人姉妹の未成年後見人になった元中学教員の大谷千晴さんは「親子の分断は、成長の大きな障害。政府は子どもを大切にして」と求めた。(望月衣塑子)』

東京新聞2023年5月15日の記事より引用

 

その時、送還を指示し決断した役人やそれを可能にした政治家が責任を取るのか?もしくは本人の運命だとして自己責任で済ますのか?

まして罪もない子供に対し。

 

この世に産まれ出た途端におかれている環境、すなわち国や社会情勢、政治的な背景、宗教観で大きな違いが待っています。

私達はたまたま日本に生れただけで、選択肢は誰にもありません。

そうたまたま日本で生まれただけです。

日々のニュースで、国際ニュースを見る事はほとんどありません。

芸能人の離婚や不倫の方が優先順位が高いのです。

ゴシップ専門なら解りますが、マスコミがまるで横に習えの様に同じ内容を垂れ流しているだけです。

その裏では世界中で苦しんでいる人達がいます。

私自身ニュースは観る方ですが、日本ではフィリピンやタイ、ネパール、ベトナムといった外国人実習生や労働者、学生が来ている国のニュースをほとんど見た事がありません。

どんな境遇なのか、どんな生活なのか知る事で、すなわちバックグラウンドを知っているのと知らなのとでは、接し方もかなり変わってくるはずです。

大切な人達、友人や家族、恋人やパートナーと付き合っている時、相手の事を知ろうと努力するはずです。

分かり合う為に自分の事も話すでしょう。

それと同じで、例え外国人とでも同じ事です。

 

もう10年以上前私の妻の姉を家族ビザで呼んだ時の事ですが、姉にとって初めての海外旅行であり、妹が住む憧れの日本という事もあり、来日をとても喜んでくれました。

その時私は義姉に「あなたの妹を妻に出来て幸せだ」と話しました。

すると「当たり前でしょ!私の妹だから」と。

日本人なら「いやいや、御迷惑をかけていないか心配で」とか「あなたの様ないい人と結婚する事が出来て」とへりくだった言い方を普通はするでしょう。

私自身、義姉にそんな言葉を期待していた自分がいました。

後で解った事ですが、妻と義姉同士の話の中で「日本に来て旦那と会って安心した」と話していたそうです。

そう、日本人とは捉え方や伝え方が違うという当たり前の事を恥ずかしながら学んだ義姉の来日でした。

その後、妻の弟や母親も来日し、フィリピン人に対しより理解が深くなった事は、私にとって大きな学びになりました。

例えば義母の来日の際も実母の様に遠慮していないで接しないと、かえって不信感を抱かれる事や感謝の気持ちを顔にはあまり表さない事等。

今では、SNSのTV電話で必ず「元気?」と言って笑いかけてくれています。

結局のところ、当たり前ですが同じ感情を持つ人間であり、一人一人が歴史を背負いながら個々の国で精一杯生きているのです。

そして、その背景を知る事が理解の糸口になる事と、そこからが本当のコミュニケーションのスタートだという事です。

そしてもう一つ大切なのは、何より自分の国の事を知る事です。

経済や政治、日本の世界に対する立ち位置、歴史や宗教等自国の事を知らないでは、外国の方への思いやりや出身国との違いを理解する力がつきません。

また外国語を勉強する事も役に立ちますが、日本語を大切にする事の方が大切です。

私の経験からも、言葉が通じなくても意外となんとかなるものです。

多くの外国人が日本に訪れ、出会いや社会の形成を共にする事も増えてきました。

一部の外国人の行動が、その出身国の人達を表している訳では無いのです

犯罪等を犯した人の出身国の人が皆同じ事をするという見方をする人が多いのも危惧するところです。

少し前も外国人労働者に暴力をふるう事件がありましたし、入国管理省での不当な扱いや在日韓国人に対するSNSでの誹謗中傷の裁判と、表に出ているのはほんの一部で、陰で泣かされて苦しまされている人は多くいます。

それも今に始まった事では無く、特に在日コリアンの方や朝鮮半島出身者の方への差別は昔から今日までずっと続いています。

韓流ドラマにアイドル達、グルメに化粧品と夢中になっているこの国の裏で。

そしてヘイトや差別、人権無視等その様な行為や扱いをする人(官民問わず)は、結局自分に跳ね返って苦しみや不幸ばかり増やし続ける事になります。

その様な行為をする人は、脳を使わない哀れな存在で、心の安息は来ないでしょう。

この世に人間の上下や優劣はありませんし、あってはならないのです。

同じ人間同士として、交流したいものです。

 

外国人と暮らす事⦅幸せ⦆(3)に続く

 

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