心の道標

様々な自分の疑問に、自分で答えを見つける旅

外国人労働者の受入れ(1)

私がフィリピン人の妻と結婚したのは、フィリピンの首都マニラのすぐ横にあるケソン市という所です。

ビザの関係もあり、現地で結婚し、日本人の妻としてビザを発給してもらい、来日という段取りでした。

結婚式は、裁判所内の市民登録事務局で裁判官の格好をした人(誰なのかよく解らなかった(笑))の前で宣誓するという形でした。

まず、結婚を証明する書類にサイン(日本人だからハンコを押せと言われ、シャチハタのハンコを押した(笑))

牧師さんの言った言葉の後に続けて話し、指輪を交換するという映画でよく見るシーンと同じで、全てが英語なので、非常に緊張した事しか覚えていません。

学校の一クラスぐらいの部屋で、4組のカップルの内の一組でした。

立ち会ってくれたのは、フィリピンパブで親しくなり、妻や私の妹の様な存在の友人と、妻の母と姉だけでした。

あっという間に終わり、何処かのレストランに行き、パーティーが始まりました。

どこの誰だか、妻も知らない人まで飲み食いするおおらかさで、数万円しかかかっていなかっただけはよく覚えています。

私は、結婚の事を家族に話もしていませんでしたので、事後報告という形でした。

私が小さい頃から、外国人という事に偏見を持っていた母親だったのも理由の一つです。

結婚する為には、当時フィリピンに2週間滞在が義務で、数千円のホテル暮らし。

朝早くから熱い国なので、すぐ横でのビル工事が始まり、ガーガーと音を立てるクーラーと相まって、よく眠れなかった2週間でした。

費用は渡航費も含め20万円ぐらいだったと記憶しています。

まあ、はるかに日本で式を挙げるよりも安かったのです。

先に私が帰国し、妻の日本のビザが下りるまで半年も待たされました。

その間、何度もラブレターを交わしたのも良い思い出です。

 

妻の日本人配偶者ビザを発給してもらう為には、沢山の書類と時間がかかるのです。

偽装結婚を防止する目的だったようですが、付き合っていた事実証明、例えば写真や手紙を提出しなくてはならないのです。

彼女は、フィリピンパブで、恋愛していた時期も半年働き、半年後にまた日本に戻るという生活だったので、手紙も何通にもなっていました。

入国管理局(当時の名称)に提出する書類は、原本と日本語に訳したものが必要で、手紙から何から何まで、書類を翻訳する為、辞書と格闘しながら書いていました。

代行業者もあるのですが、数十万円もかかり、当時の私にはとても払える金額では無かったからです。

結婚の宣誓をしても、実感が無かった私でしたが、彼女が日本に来て一緒に暮らし始めて、やっと結婚という重みを感じました。

日本人である私が、彼女を守らなければ、この国では何もできないと解っていましたし、遠くから、バカな私を信じ、来てくれた事に答えなければいけないと思っていたからです。

今でも、私の事を支え、頑張っている彼女は、フィリピンで過ごした時間よりも日本での時間が長くなって、それでも、日本人特有の本音を出さないという人達を相手に、日々仕事に、家事に、子育てに頑張ってくれています。

ほぼ8~9割が離婚すると言われている国際結婚。

何組も私の周りでも、離婚したカップルがいます。

原因の多くは、やはり経済的な理由、お金の事です。

フィリピン人の多くは、出稼ぎで外貨を得て暮らしています。

フィリピンパブで働いて、稼いだそのほとんどを、フィリピンの家族の為に使うお金で、結婚したからと言って、終わりでは無いのです。

ですから、その事で日本人の夫とイザコザが起き、離婚してしまうのです。

離婚すると、子供が日本国籍を持っている事で、ビザを持ち続ける事は出来ますが、ほとんど別れた相手からの養育費を貰っていない人ばかりです。

生活困窮者となる家庭も多いのが現状なのです。

中には、「フィリピンに帰れば」という人もいますが、子供の教育やさらなる貧困に陥る事を考えると、簡単にはいかない事情があるのです。

勿論、日本以外の様々な国に出稼ぎに出ていっています。

香港や中南米、中東諸国等は、主に家政婦として。

たまにニュースで見ると事があると思いますが、日本の大型船の船員として働いている人達も大勢います。

1年以上家族の元に帰れない事もあるようです。

大抵の場合給料は安く、国によっては暴力やレイプなど悲惨な目に会う事も珍しくありません。

やはり日本は安全な国という事で認知されています。

 

日本政府は、少子化や人手不足という事もあり、外国人労働者を受け入れようとしていますが、ニュースでご覧になった方もいらっしゃるように、一部(全てではありませんが)の日本人による、搾取や暴行が問題になっています。

特に、後進国と呼ばれている様なアジア諸国からの、労働者、留学生や研修生は、多額の借金を背おわされて来日します。

これは仲介するエージェンシーという存在があるからで、そこを通さないと、日本に来ることはまず無理だからです。

どういう訳か、先進国、特に白人に対しては、そのあたりが緩いのです。

国内逃亡、不法滞在の心配が少ないのが理由かもしれませんが、未だに納得出来ません。

安い労働力目当てで、またキツイ、汚い、危険という、いわゆる3Kに人材を求める為なら、そして安価な労働力として受け入れをするなら絶対にやってはいけない事なのです。

と同時に、お金の為に彼らが来日しているという事実から目を背けてはいけないのです。

どの様に働き、まっとうな報酬を得る事が出来るのか?考えているのです。

そこに、抜け道を作り、弱みに付け込み利用している日本人の存在がある事と、それをどうすればなくせるかを、行政は真剣に取り組まなければいけないのです。

中間マージンを取る業者を無くすか、審査を厳しくし、体裁だけの日本語学校や個人も含めた、悪質な企業を排除しない限り、お互いに信頼関係が無くなるばかりか、人生を狂わす卑劣な仕打ちをしてしまう事になりかねないからです。

安心、安全な国として日本を選んでくれた外国人の人達。

念願が叶いやっとの事で来日しても、劣悪な、悪質なそれらの日本の扱いによって、逆に不法滞在も増え、結果、悲しい事に犯罪に手を出さざる得えない人を、この国が作り出しているのです。

ですからニュースで見る外国人の犯罪の裏に様々な不合理があり、犯した者が悪いのは当たり前ですが、犯罪に至る過程にもっと焦点を当てて報道してもらいたいのです。

例えば、記憶に新しい岡山市の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生が、日本人従業員による暴行の被害を訴えていた問題で露見した通り、「岡山産業技術協同組合」は、企業と外国人労働者(実習生とは程遠い扱いが多い)の仲介をしたり、問題が起きれば解決に手を差し伸べる業務を行う機関ですが、実際はまったく機能していない実態が露見し、その監督機関の法人「外国人技能実習機構」という機関も何の役にも立っていなかった事が解りました。

この問題は、労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」が訴えた事で解った事ですが、もし彼らが手を差し伸べていなかったらと思うと、ゾッとします。

ただこの事件は氷山の一角に過ぎず、泣き寝入りしている人はもっと多くいると思われます。

公的機関がいかに機能していないか解る事案でした。

監査や検査が入る事を事前に知らせたり、上辺だけなぞって終わりという事例を過去、私も職場で何度も見てきました。

残念な事にそれは、色々な職場で見てきた事であり、公的機関の必要性を全く感じなかったばかりか、時間と税金の無駄だと強く感じました。

子供の虐待事件が起きる度に、言い訳する役所の体質と何ら変わっていません。

抜き打ち検査や査察、聞き取りなど、人の命がかかっている事をもっと真剣に考えてもらいたいのです。

そして、責任を取る立場の人間を明確にして、事件等が起きれば責任を取らせなければ、いつまでたっても、うやむやのままです。

もう30数年前の話ですが、派遣で大手の製造会社で働いていました。

冷蔵庫を作るコンベアー作業員としてです。

その会社には、タイからの研修生が多く働いており、歳が近い事もあり仲良くなりました。

言葉は中々通じませんでしたが、同じ派遣の同僚がタイ好きで、タイ語が話せる事で仕事後も彼らの寮でタイのインスタントラーメンを食べながら、いろんな話をしました。

そんな中で彼らは「なぜ同じ仕事をしているのに社員と同じ給料をもらえないのか?」と質問してきました。

同じ質問を社員にもしたらしく答えは「研修生だから」と言われたそうです。

私は後日、その大手会社社員にそれとなく、タイ人の給料の事を聞くと「安く使えるし、彼らの母国水準に合わせているから」との事でした。

当時、タイの物価は日本の半分以下で、彼らの給与も10万円ぐらいだったと記憶しています。

今から考えるとおかしな事で、結局人件費を安くする事が目的だったという訳です。

もうその会社は、業績悪化になり外国資本に頼る事となり、社名は日本語ですが、残念ながら日本企業では無くなってしまいました。

別の話ですが、以前勤めていた会社が3.11震災の影響で業績不振に陥り、「今後残業代は出せません」と言われました。

ひどい時は朝8時半から夜中の2時まで働いていたのです。

小さな町工場でしたが、家族用の奥さんが使用するでかい車に、若社長自身が仕事には必要のない大型免許をとる為(免許制度が変わる事と、将来何かあった時の為らしい)に教習所に通ったりと、削れる経費はいくらでもあったのにも関わらずの発言に、私を含め3人の従業員は不満を抱いておりました。

勿論仕事が減って大変だから、工夫して乗り越えようと話し合っていましたし、先代の社長に世話になった事もあり、一時的に給料が減るのも仕方がないとは思っていましたが、それ以降何の方針や、説明もなく社長に対する不信感が募るばかりでした。

私はその発言後、タイムカードをコピーする事を始め、資産売却しても影響のないモノの写真を撮ったりして、数カ月後労働監督署に告発し、辞表を提出しました。

誰が報告したかすぐ判るような職場での仕事の継続はムリと考えたからです。

「従業員を大切にしない会社は、絶対につぶれる」と言いながら辞表を社長に渡しました。

結果、監査が入り残業代や退職金全てを取り返す事が出来ました。

その後、2人もやめ、仲の良かった出入りのトラック運転手に聞くと廃業寸前という事でした。

もしこのようなケースが、外国で労働している時に起きたらおそらく私には何も出来なかったでしょう。

 

もう一つの例として、建設会社で働いていた外国人がいます。

彼には二人の娘さんと奥さんがいますが、いずれも外国籍です。

上の娘さんは日本人と結婚した為、配偶者ビザで日本での生活は可能です。

そんな状況の中、旦那さんが就業中脳梗塞で倒れ、仕事が出来なくなってしまいました。

彼ら家族は働き先からの就業ビザで滞在し何年も日本で生活してきました。

ただ、当たり前ですが病気で働けない状態ではビザ延長はムリですし、もしビザ延長手続きをすると、会社としても責任問題となり、社長も心を痛めておりましたが断念せざるを得ない状況でした。

さらに追い打ちをかけるように、奥さんに骨の癌が見つかりました。

保険適用でも、医療費を払える状態ではありません。

生活保護も視野に入れましたが、受給は原則日本国籍者であり、例外として適応するような日本人の配偶者、永住者、定住者等に該当しないので、滞在ビザ日数が迫っており、母国に帰る方法しか選択肢がありません。

長年日本で暮らしていた家族、母国には家も仕事も無いのです。

要するに、母国で何もしないで死ぬのを待つという選択です。

制度に伴う規則や法律がある事は当然の事ですし、法治国家として当たり前ですが、ただ、そこからこぼれ落ちる人達がいる事を、辛い立場にいる人達の事を知る必要があると思います。

人道上や歴史的背景から、一部外国籍の方も生活保護を受給してはいますが、彼らに対する風当たりも強く、中には「税金を使いやがって」とか「国に帰れ」という意見をいう人も沢山いますが、単に国際法に無知な人の発信による、悪意に満ちた偏見が多いのも事実です。

勿論、悪用している人もいるでしょうが、それは日本人にも言える事です。

 

人間ですから、事故にあったり、病気になったりと何が起きるかは誰にも判らないのです。

そして、それらの不運は、何処でいつ、国籍やビザの有る無しを問わずに起きうる事柄です。

私達が住んでいるこの国は、自由主義国であり、先進国という立場で国際的にも高い評価を得ている国です。

最近でも世界経済フォーラムで世界117の国と地域の観光競争力をランキングした「Travel & Tourism Development Index 2021」を発表し、日本は一位でした。

日本の治安の良さもトップクラスです。

そんなこの国が、世界、特にアジア圏に対する貢献出来る事はまだまだ沢山あり、それが結果的には、武力を使わない防衛という選択になりうるのです。

それは、単に観光客だけでなく、日本に来られ、働いたり住んでいる人全員に対する、国として、日本人としての資質を問われる事でもあり、自分達の国や生活の事ばかり考える事は、もはや時代遅れの過去に学ばない愚かな考えであり、同時にこの国の防衛も含めた未来を考える上でも大切な岐路の選択でもあります。

と同時に、お金の為に彼らが来日しているという事実から目を背けてはいけないのです。

どの様に働き、まっとうな報酬を得る事が出来るのか?考えているのです。

そこに、抜け道を作り、弱みに付け込み利用している日本人の存在がある事と、それをどうすればなくせるかを、行政は真剣に取り組まなければいけないのです。

中間マージンを取る業者を無くすか、審査を厳しくし、体裁だけの日本語学校や個人も含めた、悪質な企業を排除しない限り、お互いに信頼関係が無くなるばかりか、人生を狂わす卑劣な仕打ちをしてしまう事になりかねないからです。

外国人を受け入れるという事は、安易な考えの下に出来る事では無いのです。

国の制度の充実も大切ですが、私達一個人の、日本人としての意識改革が無ければ、本当の意味での新自由主義などの実現は不可能でしょう。

ただそれが理想としても、少しでも前に進む事が出来れば、この国を愛してくれる外国人が増え、防衛や経済にも大きな支えになる事になるのです。

 

次回につづく!

 

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